どうしてこんなに世界が狭くなってしまったのだろう 全ての考えがみんな君へと向かっていく #0 わかりにくい恋 「…さて、どぅしたもんかね」 ボソリと呟いた言葉は、時計の音と暖炉で燃えている薪の音に紛れた 普段は騒がしく賑やか過ぎる程のグリフィンドールの談話室は、クリスマス休暇の所為で今や時計の音がその部屋を支配するくらい整然としていた。 静か過ぎるその部屋にいるのは、珍しく相棒と離れ悪戯を仕掛けにいってきた帰り道の自分、ジョージ・ウィ−ズリ−と暖炉の目の前にあるソファで『現代の著名な魔法使い』を枕に1人安らかな寝息を立てて眠るハリー・ポッターその人だけだった ソファ近くのテーブルには何冊もの分厚い本が重なっており、その中には『ニ十世紀の偉大な魔法使い』『近代魔法界の主要な発見』『魔法界における最近の進歩に関する研究』等など、ハーマイオニ−が好んで読みそうなもののハリーには到底興味なさそぅな書物が名を連ねていた 「何調べてるんだか…」 傍らで眠るハリーに知らないフリをして近くにあった本を一冊手にとって呟く 羊皮紙もインク壷も羽ペンも近くにないし、かといって単なる興味でもなさそぅだった チラリと、今まで見知らぬフリをしていたハリーの顔を覗く うっすらと、目の下に残るクマの痕 一日中本にでもかぶりついているのか、そぅいえば最近図書室の近くでいつもの3人組みを見かけるなと思う。 入学早々何か厄介な事に関わっているんじゃないのかと、少し心配になった 「………」 そこまで思考が行き着いて、ハタリと思う。 「…ヤバ…相当かも」 入れ込みすぎだ。 確かに彼をスキな事は認めている そりゃぁもぅ片割れと共同戦線張って邪魔者を排除しようと日々画策しているくらいにスキだとは認めてはいるけれど。 いくらなんでも、普通に彼を心配して眉間を寄せてしまうほどとは思っていなかった 自分のハリーに対する思いは「スキ」ではあったけれど、そんな真剣な程のものじゃなくて。 もっと軽い、簡単にキスくらいできる程の気軽さだと思っていた それがどぅだ 今このシチュエーションに自分は何を思っている? 片割れも常に横にいる弟ロンもそのお姫様ハーマイオニ−もいず、ただ自分とハリーだけがこの空間を占めている。 このシチュエーションに、自分は何を思った? チャンスだと、 ラッキーだと、 頭の中でただその言葉だけが迂回し 勝手に心臓が煩く響く 時計の音がカチカチと嫌に耳につく ハリーの小さな寝息さえ、まるで耳元で聞いてるようだ キスくらい、簡単にできる気軽さだと思っていたのに。 暫し逡巡した後、ジョージはソファの前に跪き、ハリーよりも2回りくらい大きな手と長い指でハリーの前髪をサラリと撫でる 身動ぎもしない、愛しい人 眼鏡が変な角度に曲がっていて、つい笑いがこみ上げる そっと眼鏡をはずすと、長い睫に縁取られた今は闇に眠る碧の目 僅かばかりに開いた唇からは、静かな吐息と共に赤い舌がチラリと覗いていた 何とはなしに、フニ、とその人の唇に自分の人差し指を押し当てて、暫し迷う 柔らかいそれに、つい勝手に指が動く ソロリと唇の合間から指先を入れ、歯の間に潜り込ませると更に奥を探る そこまでしても全くもって起きる気配のないハリーにジョージはしてもしなくても結局結果は同じな躊躇をしてから、諦めた様に微笑んだ。 そのまま暖かい口腔内に導いた指先で少し歯の裏側をなぞってやれば、途端気持ちよさそうに頬を染めて眉を寄せるハリーにジョージはクスリ、と人の悪い笑みを漏らすと今度は殊更ゆっくりと歯の裏側をその指腹でなぞった 「…んぅ…」 ピクリと瞼を震わせて吐息を零すハリーに、ジョージは少し名残惜しそうに最後舌を指に絡ませてからその指先を抜き取った ツ、と。 僅かばかりの糸を引いた指先でハリーの唇をなぞる 一層艶を増したその柔らかい唇を、何ども愛おしそぅに撫でる ハリーを見つめる柔らかい笑みとは裏腹に、ジョージの心底はグチャグチャだった ここまでしても起きることのないハリーに、いっそこのままという衝動が突き上げる 心臓は相変わらず煩く音をたてて時計の音と一緒にこの耳に響く 先程の行いの所為で誘う様に開く唇と濡れたそれに、頬が染まるのが自分でも判った キスくらい、簡単にできる気軽さだと思っていたけど。 どぅやら、違ったらしい その唇に触れるだけでドキドキとしてる自分がいる キスなんて、とてもじゃないけど冗談なんかでできやしない だからといって、このチャンスをみすみす逃す様な事もしたくない ジョージはそこまで考えると、暖炉の炎と自分が被さっているいる所為で陰影がついたその頬に手を添えた。 キスなんて、簡単にできる気軽さだと思っていたのに。 今の自分は、キスの仕方を頭の中で組み立てなければいけない程動揺している 睫が、頬に触れて 彼の吐息が、唇を掠めて 世界が、闇に染められて。 「ハリー?」 「太った婦人」の穴を抜け出てきたロンが談話室にいるであろぅその人の名を呼ぶ が、ソコにいたのは暖炉の前のソファで1人静かに座るジョージその人だった 「あれ?ジョージ?ハリー知らない?」 「…部屋」 「何だ戻っちゃったのか」 言いながらフワァ、とでかい欠伸をひとつ。それからチラリとジョージをみて 「じょ、ジョージ…?」 「…何だよ」 「どぅしたの?…顔、赤くない?」 途端更にボッと音がつくくらいの勢いで余計赤くなったジョージにロンは怪訝な顔を隠せず、しかしそれ以上におかしい程赤に染まったその頬の持ち主ジョージが怒鳴った 「なっ、だ、暖炉の所為だろっ」 「でも、…耳まで真っ赤だよ」 「う、るさぃっ!いいから早く部屋に戻れ!」 「何だよ変なやつ。風邪でもひいたんじゃないのか?」 「そぅだよ風邪だ!!だから早く部屋戻れ!」 「だったら君が戻った方がいいんじゃないの…」 意味の判らない怒り方をされてロンはジョージを訝しみながらも、これ以上は関わるまいと早々と談話室を後にした 残されたジョージはといえば。 未だ心臓のドキドキが鳴り止まぬ上に真っ赤に染まった顔も隠せず、1人ソファの上で静かに寝転んでいた。 「くっそ…」 悔しそうに呟いてみても。 認めてしまった心は歓喜に満ち溢れていて。 簡単に陥落してしまった欲望は更に重度を増していた 自分をこんな風にしてしまった彼を、恨めしく思いながら。 けれどその責任だけはキチンと取って貰おうと考えつつ、 ようやく正常に戻りかけた心音と顔に叱責を加え ようやくジョージは談話室を後にした。 男が同じ男を本気で好きだなんて、正気の沙汰じゃない 好きな人ができると世界が変わるという話、判るけどまっぴら けれど、 愛してしまったのは覆い隠しようもない真実だから 仕方ない ここまできたなら、もぅ後戻りできないのも事実。 彼を手に入れる以外この心音を抑える術はないのだ こぅなったらいくとこまでいかなきゃ、どぅしようもないじゃないか ――――――― 恋は説得力のある屁理屈。 そんな事を言ったのは、誰だったか。 |