君がいる世界が 僕の世界だったから #0 遺されし愛しき人へ ジョージが 死んだ。 「は?」 「何いってんの?」 「嘘だろ」 「なぁ」 「なぁってば」 「何で」 「……」 「……」 母から告げられた言葉を疑いもせず何故か信じたのは 昨夜、引き裂かれるような痛みに身体が震えたのを知ってるから。 8月14日 午前3時26分 ジョージは 死んだ。 ジョージは、死んだのだ。 パタリ 扉がひとりでに閉まる 外にはサラサラと雨 こんな悲観的な場面にはお決まりだね そして僕は君と共に育ったこの部屋で1人泣くのさ まるでドラマティック 机の上には君との写真 手にとって泣けばいいんだろう? 遠いアングルで写真を手にする僕。勿論カメラには背をむけたまま。 バックでは窓に雨が滑り落ち、悲惨な状況を物語る そして写真がアップで移り、ポタポタと涙が落ちる ラストはズームで泣き顔の僕 こんな感じで満足かい? ドラマ的には綺麗だろうね 現実はそんなもんじゃないって 母の言葉を聞いた瞬間に涙がみっともなくこぼれ始め、その場で立ちすくむのさ 見てる者が笑ってしまうくらい、さぞ僕は滑稽だったろう そしてどこにこんな余分な水分があったのかと思うくらい涙は頬を滑り落ち 鼻水をすすりながら、顔を涙でベタベタにして大きな声で咽び泣くのさ 学校の皆がこの僕の姿を見たらなんと言うだろう かの有名なハリーポッターは呆気にとられるだろうか 実の弟でさえ、僕のこんな姿を見るのははじめてかもしれないね まるで玩具をとりあげられた子供のように 泣きつかれて眠るまでこのまま クチは故人を罵倒するのに ココロは君を失って悲鳴をあげてるよ そして後悔に苛まれるんだ 言っておけばよかった言葉が溢れ出し なのに君は聞いてもくれない 聞く術すらもたない こうしておけばよかった ああしておけばよかった そんな事ばかり考えるのさ 後悔なんぞ滅多にしない僕が、きっとこの一瞬で一生分はしただろうね ねぇ こんなみっともない姿見たら、君はなんと言うだろう? ” ひ っ で ぇ 顔 ” そうだね きっと君は笑ってこういうだろう なんて酷い、愛すべき我が同胞 そんな君が大好きだったよ ダレヨリモ そして自室の扉にもたれかかり 君との歴史を思い出すのさ なんてセンチメンタル 枯れた筈の涙が頬を滑るのもお約束 そして僕は呟くのさ ” ど ぅ し て… ” 数日間、部屋から出なかった 母が部屋の前に運んでくれる食事は喉に通らず、水だけがこの身体を保たせてくれた 今日が何日何曜日かも判らず、時間さえも判らない ただ日が昇っては暮れる その一連の動きだけがその日が終った事を告げる唯一の情報だった 不思議と眠気はなく、しかし何もしたくない所為でベットの上から動くことはなかった ただ思い出した様に彼が所有していた物を手にとっては、狂ったように涙を零した ある日ふと鏡に映った自分を見て、息が止まったのが自分でも判った 見覚えのありすぎる、その人の顔 会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて 会いたくて堪らなかった彼の人の顔が、そこにあった 鏡の中のその人は、酷くやつれた様に それでも誰よりも愛した髪の色や眼の色まで全てが鮮明で それが自分だと知っていながら 否、知っていたから ただどうしようもなく どうしようもなく それに気がついたのは、何日後だったのだろぅか 今ではもぅ、さっぱり判らない 視界の端に見つけたソレ 僕のベットの枕下 隠れるように 隠さぬように まるでどこかの怪盗の予告状 まさにメイン まさに盛り上がりどころ あったのは遺書。 日付はなし ただ封筒にはジョージの汚い字で書かれたフレッドの一言 中を見て、僕は大粒の涙を流すのさ 用意はいいかい? 3 2 1 ! やっぱりやってくれたよ 死んだ後まで、悪戯好きさ 遺書なんて綺麗なもんじゃない ただの開けたら噛み付く紙だったってわけ 僕はその痛さに大慌て 零れていた涙なんて違う意味に変わっちゃったよ 笑い出したら何だか止まんなくて 大声で狂ったように笑ったよ 下の階にいるママやパパが変な風に思ったらどうしてくれるんだか 苦しくて涙がでて 痛くて涙がでて 哀しくて涙がでて 会いたくて涙がでて どうしようもなくて涙がでて 水に沈んだ視界でみやった封筒の中 直接ソコに書かれていた文字 視界は一瞬で海に溺れた ” 僕 は 君 と 居 て 倖 せ だ っ た よ 君 は 倖 せ だ っ た ? ” へぇ 最後は綺麗に仕上がったんじゃない? 君にしては、ロマンティックな仕上げ方だね なら僕も、最後くらいドラマティックセンチメンタルロマンティックに仕上げて見せよう? まるで昼の安っぽいメロドラマの様に 僕はその日、彼の後を追った。 |