しゃべり過ぎないように はしゃぎ過ぎないように 愛しすぎないように 保とうとした、この距離感。 #1 見えない理由 「避けられてる」 「完璧にな」 トーストにマーマレードをわざとともいえる乱雑さでガシガシと塗りたくりながらフレッドが言った科白に、横に座っていたジョージは賛同しながら目の前の皿にあったベーコンをフォークでグサリとつき刺した 「君何かしたかい?」 「君こそ」 お互い相手を不信気な目で見やりながらそれでもお互いがお互いを信用している 問いたのは、唯の社交辞令みたいなものだ 「原因は何だと思う?」 「さてね。…これといった悪ふざけはしてないつもりだけど」 「せいぜい過剰なスキンシップくらいだ」 むーん、と2人して不機嫌絶好調な顔をして唸るいつもよりローテンションな2人を優秀なる双子の兄監督生パーシーが見咎めた。 「2人共今日はやけに静かだな」 「「パース」」 常に無い落ち込んだ声の双子の様子にパーシーは双子の間に座ると「どうかしたか」と問い掛けてくる パーシーの左にいたフレッドがパーシーの肩に頭を凭れかせて深い溜息を付いた 右にいたジョージも同じく深い溜息を付きつつ気だるそうにベーコンをその口に放り込んだ 「ハリーに避けられてるんだ」 「ココ最近ずーっと」 ボソリと呟かれたフレッドの科白を予想してたのかはたまた双子の成せる技なのかすぐさまジョージが付け加えるように言った 「何で」 「それを知ってたらこんなに悩んでないよ」 はーっと、またもや2人して同じタイミングで計ったように溜息を付く パーシーは双子の憂鬱の原因であるハリーを、チラリと横目で見やった いつもなら少し手を伸ばせば届きそうな処にいる彼が、今日は足をめいっぱい伸ばしても届かないような少し遠い場所にいる。 その人はいつもと同じ様に髪はクシャクシャで目は眠たそうにどことなくボンヤリしていて、それでも自弟のロンその親友ハーマイオニーと和やかに朝食をとっていた 「別に…ハリーは普通な様だけど」 「言われなくても知ってるよ」 「だから余計に困るんだ」 今やハリーを見ようともしない2人はただ黙々と目の前にある朝食と言う物体を喉に通していく フレッドに至っては未だにパーシーの肩に頭を凭れかかせたままにトーストをかじっている パーシーは自分の服に落ちるフレッドの食べかすを払いのけながらジョージをチラリと見て 「どーせまた何か変な悪戯でも仕掛けたんじゃないのかい君達は」 「してない。…と思う」 「してないよ。…多分」 速攻で答えておきながら言い切れないところがなんともはや。 常日頃の自分たちの悪しき行いをちゃんと認識してる証拠である。 パーシーはやれやれといった表情で2人の頭をグシャグシャと引っかきまわし「元気だせ」とだけ呟いた 「判らないなら直接聞く事だよ2人共。意外と答えてくれるものだ」 自分とペネロピーとの事でも言っているのか、それだけ言うとパーシーはさっさと監督生席に戻ってしまった 「顔を見られるなり逃げられて」 「言葉さえ交わせない状態でどぅ聞けとね」 パーシーに聞こえる事のなかった科白の後2人は今日既に何度目か判らない溜息を同時に付いた その視界の1番端に、眠そうな目をしてボンヤリと力なく笑う彼を据えつつ。 「ハリー、貴方最近ちゃんと寝てるの?」 「…何、突然」 オートミールを口に運ぼうとしたハリーに、目の前に座るハーマイオニーが突然脈絡の無い会話を始めた ハリーはボケッとしながらもそのままスプーンにのったオートミールを口に流し込んだ 「僕は君のほうが寝てるのか気になるよハーマイオニー、変な時間割で随分忙しいみたいだけど」 ロンがハリーの横から口を挟むように云った。 しかしハーマイオニーはロンを完全に無視してハリーを心配そぅに見続けた 余りものハーマイオニーの顔に、ハリーは首を傾けながら 「…ちゃんと、寝てるけど?」 「ホントに?」 「何だよハーマイオニー、一体何が心配なんだい?」 全くもって何も判ってないという様にハーマイオニーは口挟むロンをチラリと横目で見て。 「ハリー、顔色がよくないわ。昨日も一昨日も。ココ最近ずっとよ。何か悩み事でもあるんじゃないの?」 「そぅかな?いつもと同じように見えるけど」 「いいから貴方はちょっと黙ってて!!」 「ハーマイオニーそんなに心配しないでも僕は大丈夫だよ。ちゃんと寝てる」 「本当に?」 「本当に」 ニコリと笑いながら頷くハリーを見てハーマイオニ−は2人に気づかれないよう溜息を付いた 先程の一喝で大人しくなった(というか拗ねた)ロンは怪訝そぅにハーマイオニを盗み見た その時ちょうどウッドがやってきてクィディッチの件でハリーを呼んだのでハリーは朝食もソコソコに席を立って大広間を出て行ってしまった 「ねぇロン」 「何だよ」 先程一喝した事をまだ怒っているのか、ロンはハーマイオニ−の呼びかけにぶっきらぼうな答えを返した 「貴方、最近ハリーがちゃんと寝てるとこ見たことある?」 「またその話かよ。ハリーはちゃんと寝てるって言ってただろ。いい加減しつこいぜ」 「ちゃんと答えて」 ハーマイオニーの常では無い様子にロンは逸らしていた目線をあわせて、 頬杖をついていた所為で横に傾いていた体をハーマイオニ−の方へと戻した 「…そんなの判らないよ。寝るのはいつも僕のが先だし、朝はハリーに起されて起きるから」 「じゃぁ…ハリーがもし寝ていなくても貴方はその間眠っていてハリーが寝てるか寝ていないかなんて全然判らないのね」 「…そぅ、いうことになる、かな…」 ハーマイオニーの問い詰めるような詰問にロンはバツが悪そうに答えた ハーマイオニ−はそんなロンを見咎めるように溜息を付いて、さも深刻そぅな顔をした 「…ハリーは、多分ここ最近ずっと寝てないわ。そのうち、倒れるかもしれない」 「まさか。ハリーはそんなヤワじゃないさ」 茶化すようにロンが答えてもハーマイオニ−は深刻そぅな顔を崩さずに再度溜息を付いただけだった 「あ、」 「「…おはようハリー」」 「お、はよう」 ハリーがウッドによって連れてこられたのはいつも試合の作戦会議をする場所のひとつ クィディッチ競技場の片隅にある冷え冷えとしたロッカールームだった 無論、ソコに連れてこられたという事はハリーを含め他の選手も、双子も全員いるといるという事で。 双子からの挨拶に気づいたハリーは一瞬たじろいだものの、少し俯きながら挨拶をかわした そんなハリーの行動を、2人は咎めず溜息を付いてやり過ごした さして広くは無いロッカールームに各々好きな場所に腰かけ、ウッドの話を夢現に聞いていた 双子は未だ眠たそうなアリシアと並んでロッカーに座って凭れかかり、 ケィティとアンジェリーナは近くにあったベンチへと腰をおろした ハリーは、皆から1番離れた場所の壁に1人で座っていた その後延々と続けられるウッドの演説、もとい作戦話に皆が皆瞼を伏せ始めたり欠伸を噛むようになった頃それでもハリーだけは欠伸をする事もなく、頬杖をつきながら唯ボーとウッドをの話を聞いていた 例えケィティがアンジェリーナの肩に凭れかかってアンジェリーナが迷惑そぅな顔をしていても ジョージが隣で眠ってしまったアリシアに凭れかかり寝息をたてていても フレッドが膝に顔を埋めていびきをかいていても ウッドがそんな皆に一喝を入れていても ハリーは知らないフリをした 「オリバー、そろそろ授業始まるよ」 「え?あ、もぅそんな時間か。ヨシ、各自解散!今話した作戦は今日の夕方実行するからちゃんと覚えておくように!」 延々と続くウッドの演説を断ち切ったのは、眠っていたケィティでもアンジェリーナでもアリシアでもジョージでもフレッドでも演説を繰り広げるウッドでもなく、ただ黙ってウッドを見ていたハリーだった ハリーの言葉にウッドは解散を宣言すると、ハリーが部屋から一目散に出て行くのをウッドは視界の片隅に据えた フワァと大きな欠伸を隠しもせずにしたジョージとフレッドにウッドは全くお前らは…とブツブツ言い出した 「お前らも少しはハリーを見習って俺の話をちゃんと聞いたらどぅだ ハリーはお前らがグースカグースカ寝てる中欠伸ひとつしなかったんだぜ」 「ハリーってよっぽど寝起きがいいのね」 「ホント。オリバーの演説を朝っぱらからまともな頭で聞けるなんて」 アンジェリーナとケィティがそんな科白を吐きながらうーん、と伸びをしつつ部屋を出て行った ジョージは自分が今まで枕にしていたアリシアの肩をゆすって起し、 フレッドは未だ1人でブツブツと文句を垂れながら羊皮紙を巻いているウッドを欠伸をしながら宥めすかしていた (それに対しウッドは余計に怒っていたようだったが) 「にしても、…見たかフレッド」 「あぁ…なんだありゃ相当ヤバそぅだったぜ」 ロッカールームを出て授業に必要な教科書類を取りに行こうと寮に戻る階段で、ジョージは「笑う貴婦人」の前を通りすぎる頃ボソリと呟いた ジョージの問いが何を指しているかすぐに理解したフレッドはジョージの方へ振り向きもせず答えた 「ココ最近ずっとあぁだったけど…特に今日は酷すぎだ」 「確かに。いくら何でも限度があるぜ」 「よくあんなフラフラで真っ直ぐ歩けるよ…『フォルチュナ・マジョ−ル。たなぼた!』」 「ロンは兎も角あの心配性なお姫さんは何で何も言わないんだ」 「さぁ…もしかしたら言ってるかもしれないけど」 「太った婦人」の穴をくぐりながら寮に入ったその時、ちょうど寮を出ようとしていたのか談話室にはロンとハリー、ハーマイオニ−の3人がいた。 双子は顔を見合わせて、うん、とひとつ傾くと、自弟ロンでもなく学園の英雄ハリーでもなく、その2人のお姫様ハーマイオニ−を呼び止めた 「失礼、姫。突然で不躾な申し出、申し訳ないとは重々承知しております」 「しかし我等にも逡巡している時間がありません。少しお時間の程、宜しいでしょうか?」 「…ぇ…私…?」 キョロ、と胸に手をあてて恭しくお辞儀をする双子を前に、ハーマイオニ−は助けを求めるように傍にいたハリーとロンを見た 「じゃぁ、僕ら先行ってるね」 「え、ちょ、」 そんなハーマイオニ−の縋る目を見ようともせず、ハリーはそぅ言うとロンの手をとってさっさと穴から出て行ってしまった そんなハリーの行動を呆然と見守っていたハーマイオニ−は2人して同じタイミングで溜息をついた双子を振り返った ハーマイオニ−は助けを求められるものがいないのを確認してひとつ、溜息をついた 「何かしら」 「ハリーの事なんだけど」 「最近、オカシイと思わないかい?」 ホグワーツ1の悪戯仕掛け人2人組みがいつになく真面目くさった顔でそんな事を言う でてきた科白がそれでなければ逆にその真面目さを怪しんでいたところだ それでも、そ知らぬ顔をしていつも一緒にいるロンよりちゃんとハリーを見ていてくれたことを少し嬉しく思う この2人になら、相談しても大丈夫かと思うほど。 「私も、思ってたの。…多分、だけど。ハリー寝てないんじゃないかしら」 「「寝てない?」」 「え、えぇ…ハリーがそぅ言った訳じゃないから多分、ですけど」 双子の息ピッタリな相槌を貰ってハーマイオニ−はちょっと引き気味に答えた ジョージとフレッドはお互いに顔を見合わせて難しそぅな顔をした 「ハリーには聞いてないのかい?」 「聞いたわ今朝。でもハリーは寝てるって」 「嘘だな。多分」 ハーマイオニ−の言葉にすぐさまフレッドが相槌を打つ ジョージは口元に手をやって、フム、と考える素振りをみせた 「にしても、もし本当にそぅだとしたら結構厄介かもな」 「え?」 ハーマイオニ−がどぅいうこと、という前にフレッドがジョージの後を続けた 「さっきさ、ハリーオリバーに呼ばれただろぅ?あの時僕らもいて、ロッカーでオリバーの作戦を聞いてたんだ。」 「延々と続くオリバーの子守唄に皆が皆爆睡してた時、ハリーったら欠伸ひとつしなかったらしいぜ」 「暫く寝てないかもしれないのに、だぜ」 ハーマイオニ−が眉間に皺を寄せるのをみてから フレッドの言葉にジョージは一息おいて、言った 「あの様子じゃ、『寝てない』んじゃなくて『寝られない』って可能性の方が高いかもしれないな」 |