------この我侭な僕達を-----

#2 絶望の軌跡



愛する君を失って

僕はもぅ、ダメかもしれない

いっそ涙の海に沈んで

溺れ死んでしまえたらよかったのに



#2 絶望の軌跡



その日の夕方、ウッドに召集をかけられていたクィディッチメンバーの双子はロッカールームに足を運んだ
冷え冷えとしたロッカールームにはまだ2人以外誰も来ていなく、シンと静まり返っていた

「関係あると思うかい?」

着替える事もせず億劫そうにベンチに腰をかけたジョージがフレッドに問いた
話の前後から何の脈絡もない科白だったが、フレッドも一日中同じ事を考えていたのだろぅすぐさま返事が返ってきた

「さぁ」
「フレッド」

上辺だけ興味なさそぅに答えるフレッドにジョージは叱咤する

「ハリーが寝られない理由と僕らを避ける理由をどぅ結び付けろというんだい?」

本当はハリーが気になって気になって仕方ないのだろぅ
語調が強くなったのを自分でも感じた

「やっぱ、パースの言う通り本人に聞くっきゃないか」

ひとつ、溜息をついて。

「我が同胞ながら哀れむね。そんな情けない顔されると」
「僕もだ。君が今どんな顔してるのか言ってやろうか?きっとこんな顔だぜ」

フレッドの茶化すような科白に、ジョージはニヤリと笑って自分の顔を指差した
フレッドがジョージに何か言い返そうとした刹那、ジョージは自分の口元へ指をやった

「シッ、…噂をすればなんとやら、だ。サーのお出ましだぜ」




ガチャ、バタン

シンと静まり返ったロッカールームに入ったハリーは、まだ誰も来ていない事を知るとハーッとひとつ、深いた溜息をついた
今にも崩れ落ちそうな身体を叱咤して自分のロッカーへと近寄る
箒を傍らにおくとハリーはそのまま力が抜けたかの様にズルズルと頭と背をロッカーにつけたまま膝に頭を埋めた体勢で座り込んでしまった

限界だと、気づいていた
そろそろ寝ないと、本当にヤバイかもしれない
ハーマイオニ−の言った通り、倒れるのも時間の問題だと気づいている
目眩はしょっちゅうして、階段を踏み外す事もしばしば
でも
でも寝むれない
目を瞑っていても
布団にくるまっても
オリバーの子守唄を聞いていても
眠れない
眠れない



(どぅしよう…立てない)

座り込んだまま頭を膝に埋め、ハリーはボンヤリする頭で思った
力が入らない
そのうち人が来るこんな場所に座り込んで、マルフォイにでも見られたら間違いなく笑いものだ。それこそ馬鹿面さらして真似されて。大広間で何を言われるか判ったもんじゃない
立たなければいけないと思うのに
思っているのに

力が入らない

それもこれも

「…ぁ……せぃだ…」

涙が、溢れそうになった
ココ何年か、泣く事なんてしなかったのに

ハリーは涙が出ないように目をギュッと瞑り、もっと深く頭を膝に埋めた

そんなハリーの様を一部始終見て、フレッドとジョージが上っていたロッカーから降りてハリーに声をかけようとした刹那、

ガチャ、バタン

「あれ?まだ誰も来てないみたい」
「えー?おかしいな。さっきハリーが階段下りるの見たんだけど」

ケィティとアリシアだった
双子は慌ててもぅ一度ロッカーの上に隠れハリーは咄嗟に腰をあげた

「僕、いるよ」

ハリーは不信がられないようロッカーの向こう側にいるであろぅ2人にすぐ話し掛けた
まだ、顔は見られたくなかった

「あ、ハリー。着替え終わったら競技場にでて先にウォーミングアップしとけって。オリバーが」
「判った」

そのままハリーは2人に顔を見られないようさっさと練習用の服に着替えてロッカーをでていってしまった
その数分後ケィティとアリシアがロッカーをでたのを見計らって2人はロッカーを降りようと低くも無いソコから飛び降りようとしたちょうどその時アンジェリーナがロッカーに入ってきた
勿論アンジェリーナはロッカーに腰掛けた状態のそんな2人を見咎めて。

「…やぁアンジェラ。ご機嫌麗しゅう」
「…何してるの貴方達」
「や、いや何も」

しどろもどろに答える2人をアンジェリーナは訝しげな眼つきで睨みながら

「…今、ケリーとアリ−シャが出て行ったけど、貴方達まさか着替えを覗いて――」
「ちょ、誤解だよアンジェラ!」
「僕らがそんなバレ易い覗き方する訳ないだろ!!」

フレッドのフォローにもならない言い訳にジョージは馬鹿、と頭を抱えるとアンジェリーナは余計に怒ったようだが、とりあえずはそれもそぅかと納得して着替えにいってしまった

「君の言い訳はいつもいらん厄介を引き起こすんだ」
「でも本当の事だろ」
「まぁね。僕なら透明マントでもかぶって堂々と正面から見るさ」
「僕もだ」

ぼそぼそと話していた2人の声が聞こえたのか、アンジェリーナは「2人共!!」と一喝をいれた。







風を切って箒を自在に操る
風の音がこの耳を掠めていくのでさえ聞こえないスピードでハリーは飛んだ
この何者にも囚われない瞬間と空間がハリーは好きだった

「ハリー!あんまり飛ばすと後でバテルわよー!!」

7メートル下のほうからケィティの高い声が聞こえたがそれさえも、今のハリーの耳には言葉として認識する事が出来なかった
双子がノロノロと競技場へ入ってきたのを、ハリーは視界の隅で捕らえたけれど双子がコチラを見る前に目を逸らしてしまった

その後オリバーが競技場に顔を出し少しのウォーミングアップを終えるとすぐさま朝の作戦を実行した。作戦は主にフェイントパスの出し方で、女性人チェイサ―が見事な連携プレーを披露した。双子のビーターはその合間を縫ってブラッジャ―と格闘していた。
ハリーはその少し上で1人スニッチとその速さを競争していた。
しかし寝不足のせいか、身体が重く上手く体重移動できずに素早いスニッチを捕まえる事が中々出来なかった
身体に強くかかるスピードの上ウッドの怒号に焦りも加わり、ハリーがやっとスニッチを捕まえた時には汗ビッショリだった。

ウッドが本調子ではないそんなハリーに不審を抱き、ちょっと下りてくるよう呼びかけをしようととしたその時、もぅ一度スニッチを追いかけて壁際を凄いスピードで旋回していたハリーに、瞬間グラリと目の前が渦を描いた
今までに無い程の目眩が突然こんな状況でハリーを襲ったかと思うとハリーはそのまま箒から指を滑らしそのスピードのまま壁に向かって放りだされた

「ハリー!!」
「きゃぁぁあ!!」
「危ないっ!!」

皆の声が、遠くで聞こえた
その数秒後凄い衝撃が二度身体を襲ったが、不思議とそんなに痛みはなかった
ハリーは目をあけること無く、そのまま深い闇に囚われていった










誰かが、優しく髪を撫でていた
暖かい手だった
重い瞼を僅かに開けると、ソコにはマダム・ポンフリーがいた。
彼女の世話になるのはコレで何回目だろぅか
ハリーは重い体をあげた

「あら、起きた?」
「ぁの……僕、」
「箒から落ちたんですって貴方。さっきまで皆がいたわ」
「………」

ボーとするハリーにマダム・ポンフリーは水を差し出してくれた

「ねぇハリー、貴方最近寝てないんじゃなくて?」
「…寝てます」
「嘘をついてはダメよ。貴方の身体が教えてくれたわ。凄い不整脈だったのよ」

マダム・ポンフリーはしかめ面を崩さずハリーを叱咤した

「何があったかなんて知らないけど、そんな状態でクィディッチをしようとするなんて…自殺行為にも程があるわ。いい事?貴方の身体が万全な状態に戻るまでクィディッチは禁止ですからね」
「そんな!先生―――」
「ダメですよハリー、それから今日は念のためココに泊っていって貰いますからね」

それだけ言うとマダム・ポンフリーは病室をでていってしまった
ハリーはもぅ一度ベットに横になると溜息をついた

まさか箒から落ちてしまうなんて
しかも何の障害もないあの場面で
信じられない失態だ
マルフォイやパンジーに見られなかったのがせめてのもの救いだった

そんな事をツラツラと考えながらそぅいえば、とハリーは思う

「何で僕、無傷なんだろぅ」

痛い処はどこも無い
ただ眠気の所為で頭がボーっとするくらいだ
あの高さから壁に向かって放り出されて、眼鏡さえ割れずに?
有り得ない
かすり傷ひとつ負ってないなんて


「「ハリー!!」」

その時、マダム・ポンフリーの目をかいくぐってハーマイオニ−とロンが部屋に入ってきた
ハーマイオニ−は目が赤く充血していて、頬を真っ赤に染めていた
ロンはハーマイオニ−とは対照的に息を切らし、青い顔をしていた

「ハリー!ハリー!!」

ハーマイオニ−が息せき切ってハリーに抱きつきながら目元を更に赤く染めた
自分はいつもこのお姫様に心配をかけっぱなしだと思った

「僕は大丈夫だよハーマイオニ−」

そのフワフワした柔らかな髪に自分の手を差し込みながら、あやす様に頭を撫でた

「さっきオリバーから聞いたんだ。君が、箒から落ちたって」

ロンが所在無さげにベットの横に立った
ヒク、と喉を鳴らして恥ずかしそぅに頬を染めたハーマイオニ−は頬と同じく赤く染まった目で上目使いにハリーを見上げて。

「ちゃんと後でフレッドとジョージにお礼言いなさいよハリー」
「何で?」

きょとん、とするハリーに、ロンとハーマイオニ−は驚いたように顔を見合わせて

「何でって…知らないのハリー?貴方が無傷で助かったのはあの2人のおかげだって」
「なんだって?」
「オリバーが言ってた。凄かったらしいよ君の救出劇
何でも、凄いスピードで壁の方へ投げ出された君を壁ギリギリでフレッドが抱きとめて、そのまま壁に衝突して箒から落ちたフレッドをそのすぐ下で構えていたジョージが更に抱きとめたっていうんだから」



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