-----200M 冬の恋-----

#1 90%の幸福と10%の不幸せ



それは明らかに別れの言葉



#1 90%の幸福と10%の不幸せ



「ジョージはずるい」


ボソリと、呟くように言われた言葉




「ずるいよ…何だか僕ばかり君の事好きみたいだ」



そぅ言って彼、ハリーポッターは僕の前から姿を消した



















「はい、チェックメイト」
「………意地悪」

ガシャンッ、と鋭い音を立てて白のキングがその王冠を黒のルークの前に脱ぎ捨てて、短いゲームは終わりを告げた

「意地悪とは随分な言い草だなハリー」
「だって…少しくらい手加減してくれたっていいじゃないか…」

むすーっとしたままの口調に、思わず笑いがこみ上げる
それと同時に感じる、素直な感情を露にしてくれる恋人への愛しい想い

「強くなりたい、特訓してくれ、って頼んできたのは君だろ?手加減なんかしてどぅするんだよ」
「そぅだけど…」

クスクスと笑って言い返せば、未だ幼さを残す柔らかいほっぺをぷくりと膨らませる
そんな些細な行動も愛しくて愛しくて、堪らない。

「…にしてもちょっと、強すぎない?始めてから20分も経ってないよ?」
「……まぁね」

ニヤリと意地の悪い笑みをたえた口元から、曖昧な返事
ハリーは恐ろしいものでも見るかのような目つきで怖々と聞いてきた

「…ねぇ、…もしかして、とは思うけど…ロンより強かったりする訳…?」

ロンのチェスの強さは知っている
半年前の寮対抗杯の表彰の時にあのマクゴガナルの巨大チェスを破ったと、一躍有名になったくらいだ。ハリー自身その凄さを眼前にしたのだ。仲間を傷つけてしまうかもしれないという襲い来るプレッシャーの中での、最高のチェス・ゲーム。
我が弟ながら、そのゲームの始終は尊敬に値する

けれど、

「…そのロンにチェスを教えたのは、誰だと思う?ハリー」
「!」

まさか、という様な目で食い入るように見つめてくる
黒く長い睫に縁取られた碧の眼に、意図せずつい魅入られてしまう
瞬間失いかけた思考を一瞬にして取り戻すと、ニヤリ、と笑って小さく囁いた

「そぅ、この僕ジョージ・ウィ−ズリ−その人さ」
「…パーシーとかだと思ってた…」

楽しそうに笑って言えば未だ信じられないような口調でそぅ答える
不機嫌になったり驚いたり、コロコロと表情の変わる随分忙しい僕の可愛い人

「まさか。パーシーはロンにまともに勝てた試しがないぜ」
「そぅなの?」
「パースの場合はアレだね、策を張りすぎていざという時に応用が利かないタイプ。策士、策に溺れる、みたいな」
「…確かに」

自分が練りに練って積み上げた罠の一端でも崩されると、悉く修正が利かないやり方
レールは自分でひいても、ひいたレールは一本しかなく、しかもそれを踏み外す様な真似はできないタイプだから。

「フレッドは?」
「あぁ…あいつには勝った事がないな」
「そんなに強いの?」

驚いた様に眼を開いて問う君
その思考を自分の事だけで埋め尽くせたらどんなに幸福か。

「…自分が負けそうになるといつもチェス盤ひっくり返すからね。ある意味最高に強い」
「っ、ハハッ!やりそーっ!」

肩を竦めて皮肉めいた科白を言えば途端噴出す彼
先程まで斜めに傾いていた機嫌は、どぅやら直ったようだ

「さて、本日はこれまで。疲れただろ?」

気づかぬうちに既にもぅ2時間以上ゲームを行っていた事に気づいて、ハリーにそぅ声をかける
ただでさえ頭を使う高等なゲームだ、身体は疲れていなくとも脳が疲れていないはずがない

「ぁ、…うん」

その科白に、ハリーは一瞬目を伏せた

「?ハリー?」
「何でもないよ、さ、片付けよっか」

ニコリと笑っていつの間にか自己修復していた駒を片付けにはいる
大広間にはクリスマス休暇の前日の所為で、扉の向こうは煩くざわめいているのにこちらには2人が駒を片付けるガチャガチャとした音と、離れた席に座る誰かが本のページを捲る紙擦れの音しかなかった

「じゃ、談話室にでも行くかいハリー?皆もいるだろぅし」
「…うん、あ、ね、中庭行かない?雪積もってるし、ヘドウィグを飛ばしてあげたいな」
「中庭?…いいけど、そのかわりそのカッコじゃダメだよハリー1回部屋に戻んなきゃ」
「大丈夫だよそんなに薄着でもないし」
「ダーメ」
「…どぅしても?」
「どぅしても」

言い淀むハリーにきっぱりと言う
自分がついていながらみすみす彼に風邪をひかせるなんて事はしたくない

「…だって…そしたら談話室、通るじゃんか」
「……ロンと喧嘩でもしたのかい?」

少し言いづらそうに眼を僅かに伏せてボソリと呟く
彼がこんな事を言い出すなんて至極珍しい
だから、そぅ思ったのに。

「……違うよ」

諦めた様に溜息をついて、彼はその一言だけを言った






クリスマス休暇の為かいつもより喧騒が少ないと思われた談話室では、予想を裏切ってフレッドとロンが大騒ぎしていた
どぅやらまた片割れが最愛の弟をからかって遊んでいたようだ
ロンの顔は真っ赤に染まって器用に逃げ回るフレッドを我武者羅に追いかけていた

「おぃジョージッ助けてくれよ」

余裕の表情で逃げ惑いながら穴をくぐってきた自分にフレッドは笑いながら言った

「ハリー、ほら早くとっておいで」
「あ、うん」
「っ!チックショウ離せジョージッ」

走り回っていたロンの首根っこを無言で掴むとハリーを促す
男子寮に走っていったハリーをロンの目の前にあるソファに腰掛けたフレッドが目で追う

「何、どっか行くのか?」
「あぁ、ちょっとね」
「…何だよちょっとって」

サラリと交わしたはずの2人の会話に今までジョージの下でギャ−ギャ−騒いでいたロンの動きがピタリと止まった
どぅやら我が最愛の弟君はまだ愛しのハリーを諦めきれていないらしい
敵対心を剥き出しにしてそぅ問い詰めてきた

そんな彼の様子を少し困った様に笑って見ればお次はフレッド

「おやおや僕に隠し事かい?ジョージ。随分嫌われたものだな僕も」

肩を竦めて皮肉気に片目を瞑る
どぅやらココにも恋に破れた男が1人、また違う態度でそぅ問い詰めてくる
その2人の異なった嫉妬心に意地悪く笑って。

「生憎デート中なんでね、行き先は教えられません」

肩を竦めて先程のフレッドと同じポーズをとる
そのまま暫く細い糸をピンと張った様な緊張が場に続いたが、それもハリーが寮の階段を降りる音とともに解けた
否、解いたとも云う

「さて、と僕等はこれから君達の前から消えるわけだけど、後をつけるなんて野暮はしないでくれたまえよ親友」
「勿論。古びたただの羊皮紙を使って君らを探そうなんて思わないさジョージ」
「確かに、その古びたただの羊皮紙は僕の懐に納まっているから出来ないだろうねフレッド」

そぅ云われたフレッドは瞬間悔しそうに眉間を潜めそぅ云った自分はは勝ち誇った笑みを浮かべる
そのくらいの用意と防衛線は、常に張っておかなければいけない油断できない恋敵だから。

「?何の話だよ」

2人の会話についていけずに顔に?マークを浮かべるロンの問いにはぐらかす暇も無くハリーが談話室へと戻ってきたので、最後2人に嫌味のようなウインクと別れを告げてその場を後にした

「ジョージは着なくていいの?」

ハリーと違い談話室のソファにかけてあったマフラーだけを首に引提げていた軽装に、ハリーは心配してる様な眼で自分を見やった
その頬に軽いキスをひとつ落として

「ハリーを抱きしめていれば暖かいから」

とのたまった

瞬間外気に冷たく冷やされていた頬はその欠片も残さず真っ赤に熱く染まっていった
恥ずかしそぅに、それでもそんな様子を隠す様に拗ねた様にしてみせる恋人のその様子に、愛しく眼を細めて笑って冷たい手をとれば、緩く握り返された


その、二日後だった







「ジョージはずるい」


ボソリと、呟くように言われた言葉




「ずるいよ…何だか僕ばかり君の事好きみたいだ」



そぅ言って彼、ハリーポッターは僕の前から姿を消した



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