世界中から憂鬱が 僕を目指してやってくる #2 無知のように 「おいジョージッ!!」 バタンッ、と大きな音を出して乱暴に扉が開け放たれる 「…たまには可愛らしく‘ジョージお兄様’なんてよんだらどぅだい?ロニ−坊や」 シニカルな笑みを浮かべて頬杖をついたまま目線だけそちらに向ける 悪いが機嫌は絶好調に最悪だぜ?言葉使いには気をつけな 目線だけでそぅ云いながら。 「…、あの、さ」 常に無い自分の様子に少し臆したのだろぅ、ロンは勢いを一瞬にして沈下させバツが悪そうにチラリとこちらを見やりながら言いにくそうに言葉を紡いだ 「ハリー、に、何したんだよ」 それでもまたその名を出し様子を思い出したのか怒りが込み上げてきたのか、語尾が強くなるのを感じた。 そんなの、こっちが知りたいってのに。 「…何もしてない」 「嘘付けっ」 「……ホントだよ」 「じゃぁなんで…、なんでハリーあんな泣きそうな顔してるんだよっ」 「…知らないよ」 明後日の方向を見やりながら気がなさそうにボソリと云った科白が余程気に食わなかったのだろぅ、怒りで顔を朱に染めていた愛しの弟は言葉も告げぬほど憤慨し、逃げ科白のように一言だけ叫ぶと扉をわざとともいえる程の音と乱雑さで開けて出て行った 「何でハリーは君なんか選んだんだ!!」 云われた科白に瞬間体が強張ったのを、だけど弟はその背を向けていた所為で見ることも気づく事も叶わなかった こんな時に限って知らない事が多すぎる自分に、うんざりした。 ハリーに最後の科白を告げられてから5時間 ぞれから一度も、彼の姿を目にしていない クリスマス休暇のせいで整然とした学園内にいるのはわずか少数の人間だけ 人の気配には敏感な方だし、学内の抜け道近道は全部熟知している そして何よりの切り札 誰が何処にいるかなんて見れば一発で判る忍びの地図が手元にある 「……はぁ…」 ひとつ、深い溜息をついて。 細い指先で何も描かれていない古い羊皮紙を弄る たった一言、杖を持って言葉を言えばそれで彼を見つけられる そぅ、本気で探してしまえばいとも簡単に彼を見つけることができるだろぅ それこそものの数秒で、だ なのにそれをできないでいる自分がいるのを知っている だから5時間も、彼に会えないでいることも知っている 彼を本気で探せない理由なんて判りきっていた きっと自分は怖がっている あの科白の後に続きそうな一言に、怖がっているのだ 逢ってしまえば、云われそうな気がしてならないその一言に。 『もぅ、僕ジョージの傍にいられない』 「ジョージ」 ビクリと、肩を揺らす 思考が全て彼へと向かっていた所為で、その存在に声をかけられるまで、部屋にいたことも後ろに立たれたこともまるで気がつかなかった とんでもない失態だ 「…何」 「…何か、あったのか?」 ハリーと、とは言葉に出さず問い掛けてくる 流石我が優秀なる同朋、隣のベットで寝ていたと思っていたら先程の愛しのロニ-坊やとの会話は一つも漏らさず聞いていたらしい。 簡単に結論を導き出したという訳ですか。 「…さてね」 軽く肩を竦めて茶化した様に答えてやれば簡単に同朋はその顔色を変えた 相変わらず、ハリーが関わってくると極端な性格になる男だ 「ハリーに、何かしたのかい?」 「もし僕がハリーに何かしたところで、君に関係が?」 フレッドとは対照的に冷めたような口調と目線で答える その言葉に彼は、瞬間鋭い目線でこちらを睨みつけてくる 「おおいにあるさ、ありまくりだね」 「ないね、一ミリだってない」 僅かな嘲笑が交じった口元と口調でのいつもの冷戦 ハリーの事で喧嘩したのは、これで何度目だろぅ 「僕は君に言ったはずだぜジョージ、ハリーを泣かすような事をすれば、すぐにでも奪うと」 「まだ泣いてない」 「屁理屈だ」 咄嗟に口をついた科白に、自分でも、そぅ思った こんな言い訳じゃ、彼を負かす事なんてできやしない なのに一度でてしまった屁理屈は、自覚なしに勝手にものを喋ってしまう もはやそれを止める気も起こらなかった 「事実泣いてないだろ?ロンが云ってた科白は、君の優秀なる頭脳で勝手に君のご都合主義に改竄してしまったのかな?」 「…泣きそうになる事をしたのは、認めるのかい?」 自覚の無い屁理屈は、いつか墓穴を掘る それこそ地中深くに 「…知らないよ」 揚足をとられ苛ついた表情と口調でそぅ云って ロンとの問答の末、云った科白と同じだった事に云ってから気づいた 「何だよ知らないって」 それでも我が優秀なる同朋は、そこで踵を返す事無く更に問い詰めてくる 「知らない」 知らないものは知らないのだ。 それ以外に、どぅ答えろというのか。 「…本当に、知らないんだ」 |