抱きしめて、さらってもいいんだよすぐに #3 不遜な態度 「やぁ親愛なるジョージ君、お目覚めはいかがかな?」 「おぉ我が友フレッド君、気分はこの上なく最悪だね」 ベットに寝ているジョージを真上から見下ろす格好でフレッドは笑顔でそぅ言った 「それはいけない!なんならもぅ少し眠るかい?大丈夫、僕が安らかな眠りに君を誘ってしんぜよう!」 「それは結構。ところでフレッド君?君にひとつ尋ねたい事がある」 ベットの上からニコリと笑うと、ジョージはフレッドの腕をとり、ベットの中に引き入れ自分の下に組み敷いてその頬をペチペチと叩いた。 「乱暴はいけないよジョージ」 「なぁフレッド。君が僕に眠りの呪文をかけた後、何したんだい?」 「余りにも空が綺麗だったもんでちょっとお空の散歩にね」 「僕の名前を語ってハリーに近づいたね?」 「仕方のない話だ。なんといっても僕らは双子。ハリーが間違えても仕様の無い話さ」 飄々とそんな事を言ってのける。名を語った事を謝りもしない我が愛すべき同胞に乾杯。 ひとつ、溜息をついて。 ジョージはフレッドの上からどき壁を背に腰を下ろした フレッドもまた、ベットの上にあぐらをかいて座った 「で?聞けたのかい君を悩ませ続けた避けられてる理由とやらは」 「いや」 「聞かなかったのか?!」 「聞いたよ。そしたら『判らない』って言われた」 「避ける理由が?」 「そぅ。自分でも判らないんだって」 「ふーん……じゃぁ何で君はそんなに機嫌がいいんだい?」 聞くと、ニヤリ、と意地悪い笑みを絶えた唇が、コソリと、言葉を紡いだ 「ハリーと、キスをしたよ。勿論唇にね。それも二回」 「なっ…!!」 「悪いね。ファーストは譲れないよやっぱ」 「………」 「君の名を語ったけど、きっとハリーは気づいてるよ僕だって。頭がいい子だからね」 「……判るように仕向けたんだろ」 「そうともいう」 ふてぶてしく恋の進行を報告してくる恋敵に、ジョージはあからさまに機嫌を損ねた顔つきをしおざなりに同じ顔をした男に暫しの別れを告げ部屋を後にした おかしな角度の階段を忌々しげに踏みしめ1階に下りると、ロンとハリーがソファに座ってラジオを聞きながら何か喋っていた。 「ハリー」 呼ばれた声に、ハリーはビクリと身体を動かした (ほら見ろフレッドめ。余計な事しやがって) それから恐る恐るコチラを向き、縋る様な目で見つめ返し来た 「な、何…?」 「フレッドから聞いたよ。ちょっといいかい?」 「後にしろよジョージ、今ラジオいいとこなんだ」 横から口を挟むもぅ一人の恋敵 何気に手ごわい伏兵だったりする。何せいつもハリーと一緒だ 何でもしほうだいだし見ほうだい だったら今だけハリーを貸してくれてもバチはあたらないとそぅは思いませんかねロニ−君 「ハリー、おいで」 有無を言わさないその態度に、ハリーは戸惑いながらも、その腰をあげた ロンが行かなくていいとその腕をとったが、ハリーは曖昧に笑ってジョージの元へと行った 「ちょっと外に出ないかい?ほら、こないだ行った牧場」 「………」 「…ご安心を。僕は正真正銘本物のジョージ・ウィ−ズリ−その人さ」 「ホントに…?」 「なんならこの頬を引っ張ってみるかい?」 「引っ張っても同じ顔だろ」 クスリ、と笑って。 ジョージを信用してくれたのか、ハリーは「いいよ行こう」と行ってついてきてくれた 道中、ジョージは暑いなとだけ呟いた。ハリーは何も答えなかった 牧場では、囲むように立ち並んでいる木々のひとつの根元に座り、横に腰かけたハリーの顔の前におもむろに手をだした ビクリとしたハリーが咄嗟に目を瞑ると、ジョージは優しい声で、見てハリーと言った ジョージの手のひらから零れ落ちる、幾つもの花びら。どれも赤い、濃厚な香りを放つもので、すぐに薔薇だと気づいた。 花びらは止まる事無く留まる事無くいくつもいくつもその手から滑り落ちた ハリーの膝には赤い花びらがそこを埋め尽くし、強い芳香を放っていた 「…こっちでは、使っちゃいけないって…」 「魔法じゃないよ。マジック。マグルの世界では一番魔法に近いものってパパが言ってた」 「…何でもできるんだねジョージって」 「フレッドもね」 「………」 沈黙。 騒ぐのはただ、ハリーの眼前をハラリと落ちるその最後の赤い一片だけ 「…フレッドの話、聞いたよ。僕の名を語って、君にした事も」 ジョージのその言葉にハリーは一瞬にして顔を夕日みたいに真っ赤にし、下を向いた まるでジニ−を見てるみたいだ 「フレッドの事、嫌いになったかい?」 聞くと、ハリーは、小さく、でもすぐに首を横にふった いっそ、嫌いになってくれたらよかったのに 「フレッドの事、好きかい?」 聞くと、ハリーは少し目を伏せてから、それでも確かに首を縦にふった 「僕の事は?」 「え?」 突然フレッドジの話題から離れたジョージに、思わず顔をあげる 何を聞かれたのか、判らなかった 「ジョッ…」 「シッ、黙ってハリー」 至近に迫ったジョージの顔。もぅ、顔の輪郭さえ捉えられずその赤い目しか見えなかった 吐息が、唇を掠める つい目を瞑ってしまったハリーを愛しげに見つめると、ジョージはその唇に触れた チュ、と啄ばむ様なキス。フレッドのそれとはまた違う、柔らかなキス 唇が離れる瞬間にジョージはハリーの下唇を舐めていった こんな時に見つける、二人の異なったクセ 顔が、異常に赤くなったのが自分でも判った 「僕の事、好きかい?」 フレッドの時と同じように、唇が触れ合う至近間は保ったまま、また何事もなかったように先程の話題を持ち出す ホントにこの双子は、似てるんだか似ていないんだか、判らない。 「ハリー」 赤い顔で困った様に眉間を寄せ黙ったままのハリーに、問い詰めるように言葉を紡ぐ (嫌いだなんて、言える筈ないよねハリー) ジョージの思惑通り、ハリーは一瞬戸惑ったような素振りをみせたが、それでもキスの所為で未だに熱い吐息だけでうん、と答えた なのにジョージは尚もハリーから目を逸らさずに、意地悪げに笑って。 「ちゃんと、言葉で言って」 「ッ」 その言葉に傾いてみて初めて。 その科白を口に出せといわれて初めて。 ハリーは、やっと、気がついた 今になって、気がついた フレッドがハリーに大好きだと言った理由が ジョ−ジがハリーにキスをした理由が 今になって、ようやくそういう意味なんだと気づいた この顔が赤く火照る理由に、今更、気が付いてしまった 今になって気づいてみても、この状況から逃げる事なんて出来ないけれど。 でも、判る。 あの時、フレッドに好きかと聞かれたときはそういう意味で捕らえず勿論と答えたけれど、その意味を判った今はそんな簡単に傾く事はできやしない 自分がその科白を言うとはつまり、自分もそういう意味でジョージが好きなんだと答える事になってしまうから。 「言って、ハリー」 囁く様に、吐息だけで言葉を紡ぐ 周りには誰もいないし、見渡す限りが草むらと木々と青い空で、どんなに大きな声で叫ぼうとも誰にも聞こえない筈の空間なのに、それでもジョージは吐息だけで囁いた 風が吹き、ザァッと木々がざわめく音がする ハリーの柔らかい黒髪を揺らし、ジョージの赤い髪をなびかせた ハリーの膝で静かに佇んでいた赤い花びらが、いっそ幻想的なまでに舞い上がった 風がやみ、花びらが、舞い落ちる。 「…ハリー、僕にキスされた時、嫌だった?」 何も言えず沈黙を守ったままのハリーに妥協して、違う話題をふる でも、あと一歩で捕まえられる獲物を、わざわざ逃がす様な馬鹿な事はしない ハリーは、暫く考えた後、ただ首を横にふるだけだった その答えに気をよくしたジョージは、じゃぁ、と呟いて。 「僕に触られるのは、嫌?」 この問いにはハリーはすぐに首を横に振った 「じゃあ僕が君の名を呼ぶのは?僕が君の横に座るのは? 僕が、…君をそういう目で見るのは?」 ドキドキと、心臓がなってる音が聞こえる 耳の鼓膜に響いて、うるさい音をたてる こんな至近にいるジョージに、この音が聞こえてないか凄く心配になった 聞こえている筈は無いと思ってはいても、ハリーはジョージの顔をまともに見る事はできなかった。 それこそ、余計心臓が大きな音をたてそうで。 ハリーは、ジョージの最後の問いに顔を真っ赤にしながら、それでも「嫌じゃない」と吐息だけで答えた 名を呼ばれても。触れられても。キスをされても。そういう目で、見られていても。 何も嫌じゃない。 何故か嫌じゃない。 ただ、この心臓が煩く音をたてるだけ。 それだけが、煩わしい。 ハリーの答えに、ジョージはニコリと笑って。 「今は、その答えで満足するとしよう」 そのままジョージの睫がまぶたを掠めたかと思うと、ハリーは再びジョージによってその唇を塞がれていた 「どーせすぐ、僕を好きだと思うようになる」 |