-----薔薇になって逃げよう-----

#5 無駄な抵抗



神さま、堕落してしまいそうです。 この心を繋ぎとめておく錨を下さい



#5 無駄な抵抗



ドキドキと、未だ心臓が忙しく音を立てている
このまま破裂して死んでしまいそぅなくらい、鼓膜に響く音
ハリーは、ロンのベットの上で顔を真っ赤にしながら毛布にくるまっていた

「…ぅし…」

人に優しくされる事はおろか、好かれる事すらなかった今までの境遇がグルグルと頭の中で廻りだす。誰かに触れる事さえ未だに躊躇うのに、触れられるなんて以ての他。
愛される事なんて論外だった。
なのにそぅやって12年間積み上げてきた常が、今彼らによって悉く崩されていく。


慣れない温もりに、騙されそぅになっている

この心が、騙されそぅになっている



ツ、と。
自分の唇に指を滑らせその痕を辿る様になぞる
下唇に残る、2つの感触
同じ温もりの、違う感触

同じ顔の、違う人達





「ハリー?」

ガチャ、と、扉を開けて入ってきたのはロンだった
ハリーは一瞬ビクリとしたもののその声を聞いてホーッと安著すると、モソモソと毛布から顔を出した

「どぅしたのさ、帰ってくるなり部屋に駆け込んじゃって…
あ!もしかしてジョージに何かされたのかい!?」

眉間に皺を寄せて怒るロンにハリーはユルリと首を振って

「何でもない、違うんだ。大丈夫だから」
「そぅかい?ならいいけど…」

心配そぅにベットの端に腰掛け、躊躇いがちに手をのばしハリーの頭を軽く叩く

「何かあったんならちゃんと言えよ。僕達友達なんだからさ」
「うん。判ってる、ありがとロン」

ニコリと笑うハリーに満足したのか、ロンはヨシ、と軽く頷いた

「そんじゃ下降りよっか。夕飯、できたからさ」
「うん」









「、っ」
「ハリー?」
「さぁハリー、ロン早くいらっしゃい。ご飯が冷めてしまうわ」

1階に繋がる階段を下りて扉をあけた途端、一瞬身動ぎしたハリーにロンが気づいたがその声に被さる様にモリ―が2人に声をかけた
ハリーが見たソコは、暖かな色に包まれた食事と、ウィ―ズリ―の家族がビル・チャーリーを除く全員でその食卓を囲んでいる姿だった

そぅ、全員で、だ

全員と言う事はつまり、この家の家主でマグル好きのアーサーやその奥さんのモリ―
歩く法律絶対男パーシーに自分の前ではおっちょこちょいで内気なジニ―。
そして勿論悪戯と規則破りが恋人の双子のフレッド&ジョージが、その場にいた



忘れていた。ココは彼らの家の上、代表してもいいくらいあったか家族だったのだ。
そんな人たちが夕食を別々に取る筈あるわけがない。
ハリーは今更自分の失態に気づいた。

コチラを食い入る様に見てくる2人からハリーは何とか目を逸らしつつ、ロンとジニ―の間に席をおいた。
自分の前には双子の姿があったが、とても目なんかあわせられる状態じゃない。ハリーは極力前を見ないようにした
それでも突き刺さるような視線を感じずにはいられなかったけれど。



「そしたらパーシーがさ」
「‘また僕のバッチをとっただろぅ!さぁ返すんだ!’」
「君らがいつも疑われる様な事ばかりしてるからだ」
「よっくいう」
「しかしパーシーはちょっと」
「何ですか父さん」
「はいはい、喋ってばっかいないで」

皆の会話が、まるで遠くで聞こえるようだ
その会話に参加していないのはハリーとハリーの横で真っ赤な顔をして座るジニ−だけで、まるでソコだけ別空間の様にシンと静まり返っていた

そんな中2人の視線が、時折ハリーを見据える様に動くのが判る
それに気づかないようにしながらも、気づいてしまっているせいで意識が全てそちらに飛んでしまっている
ゴクン、と喉が音を立てて物を飲み込む
折角の料理の味も判らず、カチャカチャと、フォークを持つ手が震えてくる

上手く、飲み込めない
唇さえも、上手くあける事ができない

2人に、気づかれてしまう


何か、違う事に意識を集中しなければいけないのに。そぅ思えば思うほど2人に意識が向かっていく

心が、騙されそうになっていく




「ハリー?」
「っ、ぇ、」

いきなり横から声をかけられ思考が追いつかなかった
咄嗟にそちらを向いたものの反応が遅れてしまった
そんなハリーをロンは心配そぅに見つめて

「どぅかした?ずっと下向いて…具合でも悪い?」
「ぁ、いや、」
「何だロニ−坊やはキドニーパイがお嫌いかい?」
「それならば僭越ながら私めが頂いてしんぜよう」
「成る程、尊大なる神の贈り物を粗末にする訳にはいかないからなフレッド」
「勿論だよジョージ」
「は?え?!ちょっ」

ハリーが答えるか答えないかの絶妙のタイミングでジョージがそぅ言うとフレッドがロンの皿にあったキドニーパイをさっさとかっさらってしまった。
意識がハリーに向いていたロンは突然の双子の会話についていけずフレッドの口に消えていくキドニーパイをただ呆然と見ていた

「ちょ、フレッドーー!!」
「ロン、食事中に叫ばないでくれないか。君の唾が僕の食事に飛んでくるんだ」
「だってパーシー!」
「好きなものを後に残す方が悪いんだよ。これで何回目だい?全く庭小人みたいな奴だな」
「ジョージ!!」

こんな事は日常茶飯事らしい、ロンの見方につく者は誰一人いずモリーやアーサー、ジニ−までもがやれやれと言った顔で見てるだけだった

「ロン…僕のあげるよ」

なんだか哀れになって苦笑しながらそぅ言うとハリーは自分のキドニーパイをロンの皿に寄越した

「あらハリー、いいのよロンが悪いんですから」
「何でさママ!どぅ考えてもフレッドが悪いじゃないか!」
「それは心外!ロニ−、君がいつまでもパイを口にせずにいるからじゃないか!」
「フレッドの言う通りだぜロン。折角のパイが冷めてしまっては勿体無いじゃないか」
「そぅ、僕はむしろいいことをしたと褒められてもいいくらいだ!」
「なんだよそれっちくしょうフレッド!パイ返せっ」
「おっ!やるか〜この」
「いい加減になさい!!」

モリ−がおもむろに取り出した杖を振るうと3人の頭に本が一冊ずつ落ちていった

「だっ!!」
「「ぃっって!!」」

それぞれが頭を抱えるようにテーブルに突伏した
本は3人の頭に落ちると同時にどこかに消え去っていた

「何で僕まで…」

ロンがうっすらと目に涙を浮かべてぶつぶつと言うのをハリーは苦笑いしながら聞いた


自分がロンの問いに答えなくていい様に2人は配慮してくれたのだと、気づいた。






先程のモリ−の一喝により少しだけ静かになった食卓にハリーはやっと顔を上げることができた

それでも双子の顔を見るのは躊躇われたが向こうが普通にしてくれているのにこちらが避ける訳にはいかない。実行に移せるかどうかは不明だけど。


それに、なんだか悔しいのだ。

告白されたのはこっちなのに、何だかこれじゃぁ自分の方が余裕がないみたいじゃないか
そぅ思ってるうちに何だか本当に悔しくなってきて顔をあげた勢いでつい双子を見てしまった

と、まるでこちらを向くのが判っていたかのように2人とバッチリと目があってしまった


(ぅわっ!やっぱダメだっ)


あげたはいいものの速攻で目線は下に逆戻り
しかもあからさま過ぎる避け方に自己嫌悪の嵐がハリーを襲う


(あぁ〜っもぅっ!!どぅすればいいんだよ!)




そのままフォークをもった手さえ動かす事ができず、眉間に皺を寄せたまま暫し沈黙

視界の端には目の前にいる2人の指先だけ
なんとか顔をあげても視界にいれられるのは、せめて肩までだ


ふと、その時
つい凝視してしまっていた指先が、視界の端で忙しく動いた

向かって右で動くのが、フレッドの指先
少し繊細そぅに動くその指先はそれでも大胆に皿の上のラムチョップにその刃を突き立てる
細く長いその指先は、ジョージのそれとは似てるものの多少の違いがあった
言うなれば、ジョージの少し乱雑にフォークを扱う指先はそれでも神経質そぅに骨ばっていて、フレッドよりむしろパーシーの方と似ているかもしれない


(…初めて、身体的特徴で見分けたかも…)


今までは外見での判断ではなく喋った時の雰囲気や会話の一端で2人を見分けてきた
それこそ、彼らの母親さえ見間違うくらい似ている二人なのだから自分が見分けるのは至極難しいと思っていたから。

絶対外見では見分けられない。

そぅ思っていたけど。



そぅ、思っていたのに。









「ロンはさ、完璧にあの2人を見分けられてる訳?」

夕食を終えて今はやっかいになっているロンの自室へと戻ってきたハリーは、部屋に入り扉を閉めながら開口一番そんな事を聞いてきた

「…何だよ突然」
「や、聞いてみただけなんだけど」

ボスッ、とハリーはオレンジ色の毛布がかかったベットに乗り上げながら目の前の椅子に座ったロンに曖昧な笑みを浮かべる

「まぁ…見分けられない事はないけど。たまに判らなくなる時があるかな」
「どぅやって見分けてるのさ?」

興味津々、という顔で更に聞いてくる
夕食の時の沈みようとはえらい違いだ

「って言われてもナァ…なんとなく、かな」
「それって勘、って事?」
「んー、かも。しれない」
「そっか…」
「何で?見分けたいのかい?」
「いや、てゆーか」

見分けられちゃったんだけど。
と言ったら、彼は驚くだろぅか


「見分けられたら、バカされないから便利かなと思ってさ」
「それは確かにね」

しかし結局ハリーはロンにその事を言わず場を濁して終った



その後は何をするでもなく珍しくちょっかいに来ない双子にロンが不審に思いつつもそれにハリーは苦笑いを零しつつも代わる代わるに風呂に入りあっという間に就寝の時間となってしまった




ロンのベットの横の布団に潜り込みながらハリーは双子の事をとりとめもなく考えていた



2人が自分に好意を寄せている事
2人にキスをされた事
それを、何故か嫌だと思っていない自分
そして2人を、今になって見分けられた事


そんな事考えても仕方ないと理性では判断しているのに感情が勝手にあの2人を思い出す
ココロが、勝手にあの2人を追っている


未だに思い出すだけで煩く鼓膜に響く心音にハリーは冷たい枕にその顔を沈めた


そして、諦めた様に溜息をひとつ。



…判っているのだ、本当は
ただ、判らないフリをしているだけだ
今までの境遇が、すぐに理解させる事をこの身に許してはくれない


判っているのだ、本当は。

彼らに好意をもたれあまつさえ同じ男からキスをされても嫌がらない自分が、今になって彼らを見分けた事を。
本当は、判っていたのだ
ジョージに、問い掛けられた時からずっと。
ジョージの問いに、答えた時からずっと。

気づいてしまったのだ あの時に

2人を、『そぅゆう』対象として見てしまった事を。

だからキスをされても好意をもたれても嫌じゃなかったし、彼らを見分けてしまった要因も、ソコなのだろぅ。2人を、『2人』として見てしまったから。

友人として2人を『2人』としてみるのとは訳が違う。

意味が、違うのだ






気づいてしまったんだ本当は。

自分が彼らをそぅゆう意味で好きな事も

本当に怖かったのは慣れないとか、そんな問題じゃないことも







全部、判っていたんだ



どちらかを、選ばなきゃいけないことを。



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